・強要罪とは何か知りたい
・脅迫罪と強要罪の違いが分からない
・どのような言動が強要罪に当たるのか知りたい
強要罪とは、他人に脅迫や暴行などで義務のないことを行わせる犯罪です。
刑法第223条第1項に、「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した」場合に成立すると規定されており、「親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した」場合も同様であるとされています。
もう少し簡単に言うと、殴る蹴るなどの暴行や脅迫行為によって、他人に土下座などの義務のないことを命令したりする行為のことです。
【参考】強要罪ってどんな罪? 強要の意味や強要罪の罰則・成立する要件を解説!
違反すると「3年以下の懲役」で罰金刑などはなし
義務のないことを命令する以外にも権利行使を妨害する行為も強要罪となり、本人だけではなく親族に対し害を加えることを知らせて脅迫した場合も適用されます。
違反すると「3年以下の懲役」で、罰金刑などは記されていません。
つまり他の犯罪と比べても罪が重く、命令した行為を相手が行わなかった場合も未遂罪として処罰されるので、被害者が命令された行為をしなくても罰せられる可能性があります。
同じような罪で脅迫罪がありますが、こちらは刑法第222条第1項で「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した」場合に成立すると規定されています。
強要罪と同じく、「親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した」場合にも脅迫罪が成立します。
ただし脅迫罪には未遂の規定がなく、「義務のない行為をさせているか」や「権利の行使を妨害しているか」という点は含まれません。
さらに恐喝罪とも言葉が似ていますが、恐喝罪は刑法249条第1項で「人を恐喝して財物を交付させた」場合に成立するとされています。
金品を目的とする点で違いますが、未遂の規定はあります。
強要罪が注目された背景
この強要罪が注目されたのは、インスタグラムなどに掲載された土下座の写真です。
飲食店などの店員に接客態度などでクレームをつけ、土下座での謝罪を要求する場合が該当します。
日常生活では、セクハラやパワハラ、退職の強要などが挙げられます。
さらに、いわゆる押し売りとされる行為も同様です。
脅迫や暴行を加えた上で契約書などにサインさせたり、相手を怖がらせて無理やり購入させると当てはまります。
たとえ殴ったり蹴ったりしていなくても、「髪の毛を引っ張る」「腕を強くつかむ」「物を投げつけたり蹴ったりする」という行為も、暴行として判断される可能性が高いのです。
被害者が強要されて行為をしたと感じた場合に被害届が出されるケースがほとんどですが、冗談のつもりで言ったことも立件されることがあります。
起訴される可能性は大体4割程度
逮捕されると警察の取り調べを受け、検察へ送致されます。
その後勾留が決まれば最大23日間身柄を拘束されてしまいます。
起訴される可能性は大体4割程度で、執行猶予中の犯罪といった不利な条件がなければ、初犯の場合はほぼ執行猶予付きの判決となります。
当然ですが、執行猶予付きの判決でも前科は付きます。
他にも、強要罪の時効は3年間となっています。
冗談で言ったり罪の意識がないことも多く、現行犯などで逮捕されるケースは少ないのですが、3年の間に被害者が警察に告訴すれば逮捕される可能性があります。
被害者は恐怖のあまりその場では被害届を出さないかもしれませんが、落ち着いた後に勇気を出して警察に行くことはよくあります。
まとめ
このように強要罪は、加害者の気持ちではなく被害者の受け取り方に大きく左右されます。
後になって、無理やりされていたことに気づくこともあります。
こうしたトラブルにならないためにも、自分の言動には日頃から注意しておくべきであるといえます。