「顧問料を毎月払っているのに、節税の提案はまったくない…」
「質問しても返事が遅いし、専門用語ばかりで分かりにくい…」
「会社の未来を相談したいのに、ただ書類を作るだけの人になっている…」
もし、あなたがこんな不満を抱えながらも、「昔からの付き合いだから」「変更するのが面倒だから」と現状維持を選んでいるなら、それは会社の成長機会を逃しているかもしれません。
税理士は、単なる記帳代行や申告書の作成者ではありません。会社の財務状況を最も深く理解し、経営者の隣で事業の成長を支えるべき「パートナー」です。パートナーとの相性が悪ければ、会社の成長にブレーキがかかってしまうことさえあります。
この記事では、税理士業界での経験を持つ筆者が、経営者の皆様が後悔しないために知っておくべき「税理士変更のメリット・デメリット」を本音で解説します。さらに、変更に最適なタイミングや、失敗しないための具体的な手順、そして「本当に良い税理士」の見極め方まで、実践的なノウハウを余すところなくお伝えします。
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税理士変更を考えるべき7つのサイン【本音チェックリスト】
現在の税理士に漠然とした不満を感じていても、具体的に何が問題なのかを言語化するのは難しいものです。まずは以下のチェックリストで、現状を客観的に把握してみましょう。3つ以上当てはまるなら、変更を具体的に検討する時期かもしれません。
サイン1:節税や経営に関する提案が全くない
税理士の重要な役割の一つは、合法的な範囲で税負担を最適化する「節税提案」です。 「言われたことしかやらない」「毎年同じ申告書を作るだけ」という状態は、税理士がパートナーとしての役割を果たしているとは言えません。決算前に節税対策のシミュレーションを提示してくれたり、会社の資金繰りについてアドバイスをくれたりしないのであれば、それは危険信号です。
サイン2:レスポンスが遅く、コミュニケーションが取りづらい
質問への返信が数日経っても来ない、電話をしても担当者が不在で折り返しもない、といったコミュニケーションの問題は、経営判断の遅れに直結します。 また、「専門用語ばかりで説明が分かりにくい」「高圧的で気軽に相談できない」といった相性の問題も、長期的な信頼関係を築く上で大きな障害となります。
サイン3:顧問料がサービス内容に見合っていないと感じる
顧問料は税理士事務所によって様々ですが、重要なのは「費用対効果」です。 例えば、記帳代行と申告書作成のみで月額5万円と、経営相談や資金調達支援まで含めて月額7万円では、後者の方が結果的に安くつくケースも少なくありません。提供されているサービス内容と顧問料を冷静に比較し、納得感があるかを見直しましょう。
サイン4:あなたの業界やビジネスへの理解が浅い
飲食業とIT業、建設業と医療法人では、会計処理のポイントや有効な節税策、利用できる補助金などが全く異なります。あなたの業界の慣習やビジネスモデルを理解しようとせず、画一的な対応しかしない税理士では、的確なアドバイスは期待できません。
サイン5:ITツールやDX化に否定的・疎い
クラウド会計ソフトの導入やペーパーレス化は、経理業務を劇的に効率化します。 しかし、未だに紙ベースのやり取りに固執し、新しいITツールに否定的な税理士も少なくありません。 会社の生産性向上を考えるなら、DX推進に積極的な税理士を選ぶべきです。
サイン6:税務調査での対応に不安がある
税務調査は、経営者にとって大きなストレスがかかるイベントです。その際、税務署の主張に対して毅然とした態度で交渉し、会社の立場を守ってくれるのが頼れる税理士です。 過去の対応が頼りなかったり、税務署の言いなりだったりするようなら、いざという時に会社を守れない可能性があります。
サイン7:担当者がコロコロ変わる、または相性が悪い
大規模な税理士法人で、担当者が頻繁に変わるケースがあります。その度に会社の状況をイチから説明するのは大きな負担です。 また、知識や経験は豊富でも、人として「なんとなく合わない」と感じることも重要です。 経営の深い部分まで相談する相手だからこそ、信頼できる人柄かどうかは無視できないポイントです。
【本音解説】税理士を変更する5つの大きなメリット
税理士の変更は、単に不満を解消するだけでなく、会社の成長を加速させる大きなチャンスです。ここでは、経験者が語る「本音のメリット」を5つご紹介します。
メリット1:経営改善につながる的確なアドバイスが得られる
新しい税理士は、第三者の新鮮な視点であなたの会社の財務状況を分析してくれます。これにより、これまで見過ごされてきた経営課題が浮き彫りになることがあります。
試算表の早期提出と分析
融資の申し込みや迅速な経営判断には、月次の試算表が不可欠です。 対応の早い税理士に変更すれば、試算表がスピーディーに手に入り、「前月比」「前年同月比」の分析や、異常値の原因究明といった、未来につながる議論ができるようになります。
経営コンサルティング機能
「良い税理士」は、過去の数字を整理するだけでなく、未来の経営戦略についても一緒に考えてくれます。 資金繰りの改善提案、予算管理の導入支援、価格設定のアドバイスなど、CFO(最高財務責任者)のような役割を担ってくれる税理士も増えています。
メリット2:節税対策の最適化と新たな視点
税法は毎年改正され、非常に複雑です。税理士の知識や経験によって、納税額には大きな差が生まれます。
最新の税制改正に対応
常に最新の税制を学び、積極的に情報提供してくれる税理士に変更することで、これまで活用できていなかった税額控除や特例の適用を受けられる可能性があります。
多角的な節税提案
役員報酬の最適化、倒産防止共済やiDeCoの活用、設備投資のタイミングなど、節税の手法は多岐にわたります。自社の状況に合わせたオーダーメイドの節税プランを提案してくれる税理士は、会社のキャッシュフローを大きく改善してくれます。
メリット3:融資・補助金など資金調達サポートの強化
事業を拡大していく上で、資金調達は避けて通れないテーマです。資金調達に強い税理士は、非常に心強い味方になります。
金融機関からの信頼度向上
金融機関は、融資審査の際に決算書の信頼性を重視します。金融機関と良好な関係を築いている税理士が作成した事業計画書や決算書は、審査において有利に働くことがあります。
補助金・助成金の情報提供と申請支援
国や自治体は、数多くの補助金・助成金制度を用意していますが、情報が多すぎて自社で全てを把握するのは困難です。 資金調達に精通した税理士は、自社が活用できる制度をタイムリーに提案し、複雑な申請手続きまでサポートしてくれます。
メリット4:IT導入・DX化の推進による業務効率化
経理業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、もはや大企業だけのものではありません。中小企業こそ、その恩恵を大きく受けられます。
クラウド会計導入サポート
クラウド会計ソフトを導入すれば、銀行口座やクレジットカードの明細が自動で取り込まれ、経理の手間が大幅に削減されます。 DXに強い税理士なら、ソフトの選定から導入、運用までをスムーズに支援してくれます。
ペーパーレス化の実現
請求書や領収書を電子データで保存することで、書類の保管スペースが不要になり、検索性も格段に向上します。 税理士事務所自身がペーパーレス化を進めている場合、より実践的なアドバイスが期待できます。
メリット5:コミュニケーション改善による精神的ストレスの軽減
経営者は常に多くのプレッシャーに晒されています。気軽に相談できるパートナーの存在は、金銭的なメリット以上に価値があるかもしれません。
迅速なレスポンスと安心感
質問や相談に対して迅速かつ的確な答えが返ってくるだけで、経営者の不安は大きく軽減されます。 「いつでも相談できる」という安心感は、日々の意思決定を力強く後押ししてくれます。
相性の良いパートナーとの出会い
最終的に、税理士も人と人との付き合いです。 経営ビジョンに共感し、同じ方向を向いて伴走してくれるパートナーと出会えれば、事業を推進するモチベーションも大きく向上するでしょう。
【後悔する前に】知っておくべき税理士変更の5つのデメリットと対策
税理士変更はメリットばかりではありません。勢いで進めてしまうと、「前の税理士の方が良かった…」と後悔することにもなりかねません。ここでは、想定されるデメリットと、それを乗り越えるための具体的な対策を解説します。
デメリット1:新しい税理士を探す手間と時間
自社に合った税理士を見つけるには、情報収集、問い合わせ、面談といったプロセスが必要で、相応の時間と労力がかかります。
対策:税理士紹介サービスを活用する
「税理士紹介サービス」を利用すれば、自社の業種や要望に合った税理士を複数ピックアップしてくれます。 自分で一から探す手間が省け、効率的に候補者を見つけることができます。 また、知人経営者からの紹介も、信頼できる情報源の一つです。
デメリット2:引き継ぎ業務の負担と情報伝達の漏れ
新しい税理士には、過去の決算書や総勘定元帳など、多くの資料を引き継ぐ必要があります。この引き継ぎがスムーズにいかないと、申告業務に支障が出るリスクがあります。
対策:引き継ぎ資料リストを作成し、三者で連携する
新しい税理士に「引き継ぎに必要な書類リスト」を作成してもらい、それに基づいて現在の税理士に資料の返却を依頼しましょう。 可能であれば、新旧の税理士間で直接やり取りしてもらうのが最もスムーズです。一時的に両者と契約し、引き継ぎ期間を設けるという方法も有効です。
デメリット3:顧問料が上がる可能性
より質の高いサービスや、手厚いサポートを求めれば、当然顧問料は高くなる傾向があります。
対策:費用対効果で判断する
目先の金額だけで判断しないことが重要です。 例えば、顧問料が月2万円上がっても、年間で100万円の節税提案を受けられるなら、それは「コスト」ではなく「投資」です。複数の税理士から見積もりを取り、サービス内容と料金をしっかり比較検討しましょう。
デメリット4:解約時のトラブル(気まずさ・引き留め)
長年の付き合いがある場合、解約を伝えるのは精神的に負担が大きいものです。時には、感情的な引き留めに遭ったり、関係が気まずくなったりすることもあります。
対策:解約理由は前向きに、通知は書面で行う
解約を伝える際は、現在の税理士への不満を並べ立てるのではなく、「事業ステージの変化に伴い、より専門性の高いサポートが必要になった」など、前向きな理由を伝えましょう。 感謝の意を伝えつつ、解約の意思は明確に伝えることが大切です。また、「言った・言わない」のトラブルを避けるため、解約通知はメールや書面など形に残る方法で行いましょう。
デメリット5:過去の税務処理に関するリスクの表面化
新しい税理士が過去の申告内容をチェックした際に、誤りや不適切な処理が見つかることがあります。その場合、修正申告や追加納税が必要になる可能性があります。
対策:リスクも承知の上で、誠実に対応する
これはデメリットであると同時に、問題を早期に発見し、是正できる機会でもあります。もし誤りが見つかった場合は、新しい税理士と協力して誠実に対応することが、将来の税務調査リスクを低減させることにつながります。
失敗しない!税理士変更の最適なタイミングとは?
税理士変更を成功させるには、「いつ変更するか」というタイミングが非常に重要です。 タイミングを間違えると、引き継ぎがうまくいかず、決算や申告に悪影響を及ぼす可能性があります。
ベストタイミング1:決算・確定申告が終わった直後
最もスムーズでトラブルが少ないのが、事業年度の決算申告や個人の確定申告が完了した直後です。 例えば3月決算の法人であれば、申告期限である5月末を過ぎた6月頃が理想的です。 この時期であれば、キリが良く、新しい税理士も余裕を持って次年度の準備に取り掛かれます。
ベストタイミング2:税務調査が完了した直後
もし税務調査が入っている最中なのであれば、調査が完全に終了し、必要であれば修正申告を提出した後に変更しましょう。 調査の途中で税理士を変更すると、調査官に不信感を与えかねず、責任の所在が曖昧になるリスクがあります。
避けるべきタイミング:決算月2〜3ヶ月前や繁忙期
決算月の2〜3ヶ月前は、税理士が決算準備に取り掛かる重要な時期です。 このタイミングでの変更は、引き継ぎが不十分になり、申告ミスにつながるリスクが非常に高いため絶対に避けましょう。 また、確定申告シーズンの1月〜3月も会計事務所の繁忙期にあたるため、避けた方が賢明です。
【コラム】税理士を変更すると税務調査が入りやすくなる?
「税理士を変更すると税務署に目をつけられる」という噂を聞いたことがあるかもしれませんが、これは全くの俗説です。 税務署は、税理士の変更履歴を逐一監視しているわけではありません。税務調査の対象は、あくまで申告内容に基づいて選定されます。適切なタイミングで、正しく引き継ぎを行えば、税理士変更自体が調査の直接的な原因になることはありませんのでご安心ください。
【完全ガイド】税理士変更を成功させる5つのステップ
税理士変更を決断したら、計画的に手続きを進めることが成功のカギです。以下の5つのステップに沿って、着実に進めていきましょう。
ステップ1:現状の課題と新しい税理士への要望を整理する
まずは、なぜ税理士を変更したいのか、現状の不満点を具体的に書き出します。そして、新しい税理士には何を期待するのか、要望を明確にしましょう。
【整理シートの例】
| 現状の課題・不満点 | 新しい税理士への要望 |
|---|---|
| 節税提案がない | 決算前に節税シミュレーションをしてほしい |
| 融資の相談に乗ってくれない | 資金調達に強く、事業計画書作成を支援してほしい |
| 訪問が年1回しかない | 月に1回は面談して経営状況を相談したい |
| クラウド会計に対応していない | クラウド会計の導入をサポートしてほしい |
この作業を行うことで、税理士選びの軸が定まり、面談の際にも的確な質問ができるようになります。
ステップ2:新しい税理士候補を探す
要望が固まったら、候補となる税理士を探します。探し方にはいくつかの方法があります。
- 税理士紹介サービス: 希望条件を伝えるだけで、無料で複数の税理士を紹介してもらえます。
- インターネット検索: 「地域名 業種 税理士」「資金調達に強い 税理士」などで検索し、事務所のウェブサイトを確認します。
- 知人経営者からの紹介: 信頼できる経営仲間がいれば、紹介してもらうのも良い方法です。
- 金融機関や商工会議所からの紹介: 取引のある銀行や、所属する商工会議所に相談してみるのも一つの手です。
ステップ3:無料相談・面談で相性を見極める【質問リスト付き】
候補者を2〜3人に絞り込んだら、必ず直接会って面談しましょう。 多くの事務所では無料相談を実施しています。面談は、税理士の能力や人柄、そして自社との相性を見極める絶好の機会です。
【面談で確認すべき質問リスト】
- 専門性について: 「先生の得意な業種や分野は何ですか?」「弊社と同じような規模・業種の顧問先はありますか?」
- サービス内容について: 「顧問料には、具体的にどこまでのサービスが含まれますか?」「資金調達や補助金のサポート実績はありますか?」
- コミュニケーションについて: 「普段の連絡手段は何ですか(電話、メール、チャットなど)?」「質問した場合、どのくらいで返信いただけますか?」
- 担当者について: 「契約した場合、どなたが主担当になりますか?」「所長先生との面談は可能ですか?」
- 料金について: 「お見積もりをお願いします。追加料金が発生するケースはありますか?」
ステップ4:契約内容をしっかり確認する
面談を経て依頼したい税理士が決まったら、契約に進みます。契約書の内容は隅々まで確認し、不明点があれば必ず質問しましょう。特に以下の点は重要です。
- 業務範囲: 顧問料に含まれるサービス内容が明確に記載されているか。
- 料金: 月額顧問料、決算申告料、その他オプション料金が明記されているか。
- 契約期間と解約条件: 契約期間はいつまでか、解約する場合は何か月前に通知が必要か、違約金の有無などを確認します。
ステップ5:現在の税理士への解約通知と引き継ぎ
新しい税理士との契約が固まったら、現在の税理士に解約の意思を伝えます。
解約の伝え方
電話や対面で伝えるのが丁寧ですが、気まずい場合はメールでも構いません。 これまでの感謝を伝えつつ、解約の意思は明確に示しましょう。
引き継ぎ依頼
新しい税理士に必要な資料(過去3期分程度の決算書、総勘定元帳など)のリストを提示し、返却を依頼します。 スムーズな引き継ぎのために、新旧税理士間で直接やりとりしてもらえるようお願いするのがベストです。
業界経験者が教える「良い税理士」の見極め方【裏ワザあり】
ウェブサイトやパンフレットだけでは、本当に信頼できる税理士かどうかを見極めるのは困難です。ここでは、業界にいたからこそわかる、面談時に使える「良い税理士」の見極めポイントを伝授します。
専門分野と実績を確認する
税理士にも得意・不得意があります。相続に強い税理士、国際税務に強い税理士、IT業界に強い税理士など様々です。自社の業種や、これから注力したい分野(例:資金調達、事業承継など)での具体的な実績や成功事例を尋ねてみましょう。
レスポンスの速さとコミュニケーション方法
面談のアポイントを取る際のメール返信の速さや、電話応対の丁寧さも重要な判断材料です。また、コミュニケーションツールとして、メールや電話だけでなく、ChatworkやSlackなどのビジネスチャットに対応しているかどうかも確認しましょう。柔軟に対応してくれる事務所は、日々のやり取りもスムーズです。
料金体系の明確さ
料金について質問した際に、明確な料金表を提示し、分かりやすく説明してくれる税理士は信頼できます。 逆に、「それはやってみないと分からないですね」といった曖昧な回答が多い場合は注意が必要です。後から高額な追加料金を請求されるトラブルにつながる可能性があります。
【裏ワザ】面談時に「最近の税制改正で注目している点は?」と聞いてみる
これは、税理士が常に最新情報をインプットし、積極的に知識をアップデートしているかを見極めるための「魔法の質問」です。
良い税理士であれば、「〇〇という改正があり、御社のようなケースでは△△というメリット(デメリット)が考えられますね」というように、具体的な内容を自社の状況に絡めて説明してくれるはずです。逆に、答えに詰まったり、一般的な話しかできなかったりする場合は、情報収集を怠っている可能性があります。
まとめ:税理士変更は、事業を飛躍させる「戦略的経営判断」
税理士の変更は、決してネガティブなものではなく、会社を次のステージへ進めるための「戦略的な経営判断」です。
確かに、変更には手間や時間、そして多少のリスクも伴います。しかし、自社に最適なパートナーと出会うことで得られるメリットは、それを遥かに上回るはずです。経営改善、節税、資金調達、業務効率化など、その効果は会社の隅々にまで及びます。
現在の税理士に少しでも疑問や不満を感じているなら、まずは情報収集から始めてみませんか。この記事が、あなたの会社にとって最良のパートナーを見つけるための一助となれば幸いです。
